初代おじいさんが始めたやさしい甘味を守りたい

この店は大正4年におじいさんが創業しまして、23年前までは田代大官町の交差点でやっていましたが、道路拡張で今の場所に少しだけ移動してきました。昔、ちゃんちゃん坊などのあめ類は、今みたいに一つひとつを袋に入れずに量り売りをしていまして、入れ物の中で固まってしまうので注文が入ると揺らすことで外して、販売していました。創業者であるおじいさんは厳しくて、私が小学生の頃は学校に行く前や、学校から帰ってきて遊びに行く前に、あめやお菓子の袋詰めのノルマを言いわたされて、兄弟で競いながら急いで手伝ったことを覚えています。
ちゃんちゃん坊と並んで昔からのうちで作っていたのは、あんぱん菓子という、当時なかなか手に入らなかったあんぱんを模した和菓子です。2代目である父親は、周りから「おい、あんぱんや!」とあだ名されて悔しかった思い出があったと話しています。わたしは若い頃、東京の喫茶店やケーキ屋でお菓子づくりを学び、25歳の時に鳥栖に戻ってきまして、父親とこの店でお菓子づくりを継いだかたちです。

「おじいちゃん、おとうちゃん、赤ん坊」これがちゃんちゃん坊の意味ですかね

ちゃんちゃん坊の名前の由来をよく聞かれますが、おそらく「おじいちゃん・おばあちゃん、おとうちゃん・おかあちゃん、赤ん坊」の3世代で楽しめるあめということで付いたと思います。あめの中に炒って砕いた大豆が入っているのが特長なのですが、甘いものが少ない時代でしたので、かさ増しの意味もあったんでしょうね。それと、田代地区はかつて対馬藩だったいうことで、おじいさんの時代は対馬で採れる大豆と鳥栖で採れるお米の物々交換が行われていたそうで、その歴史もあるんだと思います。
ちゃんちゃん坊づくりで大事なのはあめを煮詰める温度でして、高すぎると割れやすくなったり、くっつきやすくなったり、とても気をつかう部分です。柔らかいあめの塊を今は機械で伸ばしていますが、昔は素手で柱に引っ掛けながら伸ばしていたそうで、そうとう熱かったと思います。年配の方で定期的に買ってもらう人がいますが、若い人もおばあちゃんの家にあったと懐かしんで、お土産として買っていく人も多いです。

技術・味・手づくり、そしてこの名前は後世に残していきたい

子どもがいますが、後継ぎという話にはなっていません。正直、昔ながらのお菓子屋を続けていくのは、なかなか厳しい時代だと思います。でも、おじいさんが始めたちゃんちゃん坊は、この店でなくてもどこかの店でこの技術をついでもらいたいなと、技術・味・手づくり、そしてこの名前は後世に残していきたいと思っています。できれば、鳥栖の店舗で継いでもらうのが理想ではあります。この土地でないと食べられないお菓子ですので。

住所:鳥栖市田代大官町821-1
電話:0942-82-2771
営業時間:9:00~19:00
休み:水曜日
駐車場:4台