老舗だからこそ、時代の変化に合わせていくことが大切

明治22年2月11日にひいおじいさんが水田屋を開業しました。わたしで4代目になりますが、20代の頃は6年間ほど横浜の大手電機企業でエンジニアをしていまして、大きなプロジェクトに参加するなどやりがいはありましたが、いずれは鳥栖に帰らないといけないという意識でいました。帰ってきてからは、先輩職人からあんこづくり等を習いながら腕を磨いていきましたが、もともと子どもの頃からクリスマスケーキや正月の和菓子など繁忙期の手伝いをしていたので、作業はスムーズに覚えていけたと思います。
今、本町の本店と鳥栖駅前のフレスポにお店を出していますが、時代に合った売り場や売り方、そして商品も変化させていくべきだと思います。ちょうど新型コロナが流行する前に、これまでの小売りメインの売り方から、スーパーなどBtoBの卸し販売に変えましたが、本当に良かったと思います。スーパーなどは、コロナ禍であってもお客さんは買いに行きますからね。老舗といわれますが、時代の変化に合わせていくことが大切なんだと思います。

上あごにくっつかない、甘さ控えめの名物もなか「ふくらすずめ」

ふくらすずめは水田屋を代表するお菓子ですが、戦後におじいさんがお湯で溶かす懐中しるこから始まりました。鳥栖ということで、かわいらしいポピュラーな鳥である雀をモチーフにしたと思います。昔はもなかの皮もうちで作っていて、当時のかわいらしい木型が残っていて本店のケースに展示しています。中に入れるあんこは北海道産の小豆を使っていますが、昔は今よりも甘かったと思います。今は時代に合わせて、甘さ控えめです。
作り方は発売当初からほとんど変わらず、でき上がったあんを皮に詰める作業は、ほとんどの最中屋が機械を使いますが、うちでは今も手作業にこだわっています。ふくらすずめと並んで人気なのは、練乳が入ったやさしい味のあんをしっとりとした生地でくるんだつくし峰(つくしね)です。国鉄の拠点だった鳥栖駅は労働者が多く、そこで働く人たちの日々の疲れを癒したのが、このお菓子だったと思います。今も鳥栖のお土産として、ふくらすずめ・つくし峰を買っていかれる方も多く、ありがたいですね。

まだまだ133年目、200年続くお菓子屋を目指していきます

子どもがいないので身内でこの店を継いでいくことは難しいと思っています。ですが、わたしは50代なので、まだまだ元気にこの店をやっていきますが、親族外への事業承継も選択肢としてはあると考えます。先代が築いてきた歴史や伝統は守っていきますが、時代の変化に合わせて固執しないのがわたしの考え方です。いろいろな選択肢を模索しながらも、目標は200年を超えるお菓子を目指していくことです。

住所:佐賀県鳥栖市本町1-970
電話:0942-82-2071
営業時間:9:00~18:00
休み:毎月第2・4木曜日
駐車場:5台