大門の兵児はずし。文政の世から続く大門おこしは、今もなお若い方にも大人気。

創業は1823年です。深川文造さんという方が、三間山円通寺への参道の大門の近くでお団子などを販売する茶屋「松月堂」を始めました。明治以降にお砂糖が入ってきてから、おこしも販売するようになりました。2代目の時に改良を加え、さらに人気となったおこしは「兵児(褌)まではずして食べたいものだ」と旅人に愛され、「大門の兵児はずし」の愛称で親しまれていたそうです。戦後、父の代に店名を「大門おこし本舗」と改名し、円通寺の大門にちなんでこのおこしの名前を「大門おこし」と名付けました。
私は子どもの頃から店の手伝いをしていて、元々店を継ごうと思っていたので、高校卒業後に店に入り、その後店を継ぎました。元々小城羊羹も販売していたので、おこしのイメージだけではなくもっと皆さんに親しんでいただけるよう店名を「大門堂」にしました。昔からのお客様や、おじいちゃんやおばあちゃんが買ったおこしを食べていた子どもさんやお孫さんも好きになってくれて、そういう若い方も買いに来ていただいており、嬉しい限りです。

黒と白が織りなすおこしのコントラスト。守られ続ける”いつもの味”

大門おこしは、お米を膨らませて黒糖をからめた「黒」と、細かく刻んだお餅を膨らませ、白砂糖がまぶされた「白」の2種類があり、生姜を少し混ぜ合わせることでさらに美味しさが引き立つようにしています。季節によって気温や湿度等の条件が変わってくるので、作り方を変えたり注意をしながら、昔からの味をいつでも食べていただけるように作っています。就職等で全国に行っている方から昔食べた懐かしい味と言ってもらえることが嬉しいです。地方発送もしているので、小城に帰ってきたときだけではなく、故郷の懐かしい味が恋しくなったらご注文をいただき、お送りしております。
もち米は佐賀の山手の方で作られるひきの強いヒヨクモチにこだわっています。羊羹に使用している小豆にもこだわりがあり、北海道産の大納言を使用しています。いつも召し上がっていただいているお客様、久しぶりに召し上がっていただくお客様にも「いつもの味」を楽しんでもらうために、このこだわりは変えずに、作っていきたいと思います。

小城では珍しいおこしのお店。孫が大きくなるまで、今は夫婦2人で頑張っていきます。

小城は羊羹の店が多くある中、珍しいおこしの店である当店を残してほしいとのお声をいただき、大変嬉しく有難い限りです。実は、お買い物に来られる方からもよく言われるので、そのたびに頑張ろうと思います。子ども達は大学に進学し、卒業後は他県で全然違う仕事をしているのですが、帰省した時は小学生の孫が店を手伝ってくれたりと助かっています。5歳年下の妻が「孫が大きくなって店を継いでくれるまで、私が頑張る!」と言ってくれていて、とても心強く思っています。
しかし、長年使用している機械は、修繕を繰り返しながら作っているので大変なところもあります。機械のこともわからないといけなかったり、技術的な部分、職人の技のようなところもあるので、未経験の方が引き継ぐというのはなかなか難しいかもしれません。孫が大きくなるまで、夫婦2人で頑張っていきたいと思います。

住所:小城市小城町500
電話:0955-73-2523
営業時間:8:00~19:00
休み:元日
駐車場:普通車2台