実は、やまぐちパンの前身はお米屋さんです。昭和元年頃から私の祖父が長崎県松浦市でお米屋さんをやっていたそうです。そして第二次世界大戦後、佐世保の米軍基地にてパンの製造の講習会に参加してパン作りの技術を修得して、そこから学校給食用のパンを製造するようになりました。
当時から伊万里市はとても活気がある町で、学校給食用のパン製造の需要もあり、松浦市から伊万里市に移ってお店を始めたそうです。私が長男だったこともあり、子どもの頃から祖父母からも「跡取りになってほしい。」と言われていました。
大学卒業後に、東京のパン屋さんで修業を積んでから、２７歳くらいに伊万里に戻ってきて、お店に入りました。そして、２代目だった父から２５年くらい前にお店を引継ぎ、私が３代目になりました。
お店の場所が、伊万里商業高校の通学路だったこともあって、昔はお店に入りきれないくらいのお客様にお越しいただいていたのが懐かしいです。

当店では、時代に合わせて進化した製法を取り入れていきながらも、伊万里市民の皆さんにご愛顧いただいている昔からのパンを販売しています。朝からどんどんパンを焼いているので、随時焼きたてパンを店頭に並べています。
長年通っていただいているお客様方のパンの好みも様々で、皆さんそれぞれにお好きなパンがあるようですが、やはりバタークリームパンがリピーター様も多く人気です。
そして、そのバタークリーム自体がまた人気があり、「バタークリームが美味しいから、バタークリームだけを販売してほしい。」とのお声をいただき、父の代からバタークリームを計り売りで販売しています。バタークリームを購入されたお客様に聞いてみると、当店で販売しているソフトフランスパンや食パンに塗って召し上がっていただいているそうです。
クリームパン以外にもドーナツやあんぱん等の甘いパンのラインナップが豊富ですが、カレーパンやサンドイッチ、ハンバーガーなどの総菜パンもご用意しております。

父の代の頃は、職人さんを２人雇用して、たくさんのパンを作っていました。現在は、店頭での販売は妻と従業員さんに任せて、私１人で製造の方を担当しています。
やはり、一つ一つ自分自身の手で作ったものをお客様には召し上がっていただきたいという想いからです。私には娘が２人いますが、現在他の仕事をしています。
親子だったら多少は言いやすい部分もあるのでしょうけど、パンを製造する技術の部分を他の人に伝えるというのは、とても難しいものがあります。また、パンの製造の仕事は、とにかく力仕事の体力勝負なので、厳しい面もあるかと思います。
代々引き継いだ店なので、残していけたらとは思いますが、なかなか無理強いできるものでもありませんし、まずは日々お越しいただいているお客様を大切にしながら、私自身ができるところまで頑張ってみようと思います。