婚礼箪笥専門から、デザインインテリアの店へ

実は家業は継ぎたくないと思っていました。というのも、私が学生の頃、工場が夜中まで電気を灯して稼働しているのを見て、やりたくないなと。ですが高校卒業後、そのままミマツ工芸に入りました。広島の会社に行く話が出ましたが、やはり大好きな地元を離れたくない気持ちが勝りました。考えは変わるものですね。もともとウチは婚礼箪笥専門でやっていましたが、当時は需要がものすごく、毎日のように夜中まで作っていました。その頃は各工場一種類の家具を作っていたので、家具ひとつでどれだけの需要があったのかと思います。最初の一年は定時で仕事を終えていましたが、だんだんと仕事に責任を感じるようになってきて、他の職人さんと一緒に遅くまで残って作業するようになりました。
時代が移り変わると共に、さまざまな小物を制作していくうちに今のデザインインテリアを手掛けることになりました。ちなみに3年ほど前までは先代である父が現役でして、私のすることに反対することもなく、静かに見守っていてくれました。自由にできたからこそ、今の私があると思います。本当にありがたいなと思います。

年輪に、美とストーリーを感じ取れるようなデザイン

杉材の可能性を見出したときから、国産杉材を使用した作品を制作しています。木目の荒さを作品に落とし込むことで、自分でも驚くほど表情の変化を見せてくれます。「NENRIN」というシリーズは、単に杉材を使って制作したものではなく、長い時間をかけて一枚一枚重ねてきた年輪に美とストーリーを感じ取れるようなデザインを意識して制作しています。木目を活かし、日本の伝統的な模様に組み上げられた作品が空間に佇む姿は、空気感まで変えるような雰囲気を携えています。海外の方にも大変好評で、ヨーロッパで出展した際の反響はとても良いものでした。新型コロナが蔓延する以前の話ですが、日本へ旅行に来られた外国人の方が、東京のデパートでお土産としてよく買われていました。
いずれ海外からのお客さまが戻るでしょうから、その時に向けてしっかりと準備はしています。レクサスコレクションでも扱われており、レクサス販売店で注文されるお客様も多くいらっしゃいます。「M.SCOOP」というシリーズの、ウォルナットやチェリー、メープル材を使用した、腕時計を置くD.Watcherは実のところ一番人気のある作品です。他にも、脊振や神埼の自然の色彩を作品の色に表したりと、日々の暮らしに気持ちよさを感じる作品作りを心掛けています。

往年のプロダクトのように、永久的な作品を残したい

自分の子どもたちには当初から、自分のやりたいことを見つけてしっかりやりなさい、と教えてきました。それゆえに子どもたちはそれぞれ自分の道を進んでいます。今いる社員が継いでくれる可能性もあるでしょうし、もしかしたら未来の新入社員がその気持ちで入ってきてくれるかもしれない。こういった仕事が好きな人に継いでほしいですよね。私が目指すところは、今でも生産される往年のプロダクトのように、永久的な作品を残すことです。そのためにミマツ工芸が残っていってくれたらばと思います。木材を扱う立場から、ゆくゆくは山と海を正しく循環できるような環境づくりをしていきたいと考えています。私がしている仕事が、将来そういったことに貢献していると知っていただけるような活動をしていきたい、まだまだ時間が必要ですが一歩一歩頑張っていきます。

住所:神埼市千代田町柳島1265-1
電話:0952-44-2455
営業時間:10:00~19:00
休み:水曜日
駐車場:10台