ずっと働ける場所は自分でつくらねば! ネオンまばゆい繁華街からちょっと離れた場所で始めた小料理屋

中林典子さん(68)

昔からお料理が大好きで、いつか自分の店を持ちたいなという夢がありました。子育てが落ち着くまでは定時で帰れるところで働いていました。その後、調理学校に行って料理を学び、修行のつもりで和食のお店に就職して4年くらい勤めました。私がお店に勤めていた20数年前は、まだまだ職場環境の改善とは無縁の時代で、和食の世界の厳しいしきたりもありました。下っ端だから朝から閉店まで懸命に働きました。当時の夜の街は愛敬あたりがメインでネオンが輝いていました。私がお店をもつならば、女性一人でやるからネオンから少し離れた場所がいいと思い、愛敬から南の方へ物件を探して中央本町の復興通りと呼ばれている場所に決めました。見つけた物件は、元々料理屋だった店で、昭和の雰囲気が残って天井やカウンター、木の棚もいい感じでした。店をスタートさせたのは、2000年8月のことでした。

食材の味を活かして味付けはシンプルに。〆のおにぎりは、タイミングを見計らいガス釜のスイッチをオン!!

中林典子さん(68)

店ではいつも、5~6種類の料理をご用意しています。白和えは、豆腐、ゴマ、砂糖と塩で和え衣をつくって、お野菜と絡めると、できあがりです。うちは隠し味で生クリームを少し加えています。春菊や菜の花、スナップエンドウやソラマメなどが出回ると、その時期のお野菜を使います。冬は柿やしめじを入れたりします。和食もどんどん進化していて、フルーツの白和えも流行っているみたいだから、色々チャレンジするのも楽しいですよ。
おにぎりは、佐賀の米はおいいしいから、シンプルに塩むすびが一番!これに海苔があるとさらに美味しくなりますね。お客様も佐賀のご飯と海苔の美味しさを「ほら、やっぱり美味しいよね」って確認しながら召し上がっていますよ。山育ちの方は寒暖差がいい、海育ちの方は潮風にあたったお米は素晴らしい、私は三日月町出身だから肥沃な佐賀平野の大地の米がいいとか言って米談議で盛り上がったりします(笑)
お客様のリクエストが多い「ポテサラ」は、キュウリとじゃが芋とニンジン、マヨネーズ、材料も作り方もいたって普通なのに、「ポテサラないの?」とよく言われるので毎日作っています。コツは、じゃが芋を茹でたあと、チリリというまで水分を飛ばすことかしら。新玉ねぎの季節は玉ねぎを入れたりしていますよ。季節のものを味わうって素晴らしいことですね。

体が続く限り店を続け、好きな料理を出してお客様の笑顔がみたい

中林典子さん(68)

子育てが落ち着いて、一生働ける場所がほしくて自分のお店を持ちました。その頃は後継者のこととか考えていませんでした。よそのお店の例をみていても、うまくいったという話をあまり聞かないから、人に店を継ぐという問題は難しいものですね。子どもたちはそれぞれ独立しているので、子どもには後を継いでもらおうとは思っていません。だから、あ・うんという店は、私の代で終わらせてもいいのかなとも思っています。ですが、私たちが昔から食べてきた庶民の味はなくなってほしくないんです。お客様に推薦していただいた「白和え」を例にとっても、昔の人はお豆腐と砂糖、塩で和え衣をつくって季節の野菜と絡めて食べていました。マヨネーズの普及で野菜を和える役をとられちゃったけど、手間暇かけた日本人の知恵が生きたお料理は本当に素晴らしいものばかり。そういった食文化は受け継がれていってほしいです。
後を継ぐ場合に大切なのはやっぱり「信頼」でしょう。人と人の信頼関係です。私はまだまだ元気なので、後継者のことを頭の片隅に置きながら営業を続けていきます。

住所:佐賀市中央本町2-1 佐野フクコービル1F
電話:0952-27-1567
営業時間:18:00~23:30 L.O
休み:日曜日 ※臨時休業あり
駐車場:なし