“日本のコメ不足”から生まれたアイデア⁈

学校を卒業した後、長らく工場で勤務していましたが「自分で商売がしたい」と思い退職。うどん店で4年ほど働いた後、夜勤のアルバイトをしながら昼間は開業準備に奔走していました。ところが、やっと物件が見つかっていよいよという時、無理がたたって倒れてしまったんです。オーナーに申し訳ないので一旦契約を白紙に戻そうとしましたが「退院するまで待つよ」と言ってくれて。そのおかげで、1048年、31歳で「かつみ屋」を開くことができました。開業資金もそれほどありませんでしたから、テーブルも椅子もすべて手作り。とても愛着があるんですよ。
当店の特徴は、圧力釜を使った製法です。注文をいただいてからゆで、できたてを提供しています。この製法を思いついたのは、日本がコメ不足に陥った時でした。食べ慣れない外国産米でも圧力釜で炊いたらおいしく食べられたことから「うどんもおいしくなるのでは」と試してみたら大当たり。表面はフワフワ、中はしっかりコシのあるうどんができました。さらに、当店では釜から揚げた麺を洗わずダイレクトに使うため、表面のぬめりが損なわれず、だしとの一体感が生まれて味のよさが高まっています。

看板メニュー「すどりかま玉」は妻の味をヒントに

2011年の九州新幹線新鳥栖駅開業に合わせ「鳥栖」にちなんで鶏肉と卵を使ったB級グルメを市内の飲食店から売り出そうという取り組みがあり、当店にも市役所から依頼がありました。それでメニューを考えていたんです。妻がよく家で作ってくれる、鶏肉を酢・しょうゆ・砂糖で味付けたおかずが家族みんな好きで、これをメニューに取り入れられないかと仕入れ先の肉屋さんに話したところ「鶏皮でやったらいいんじゃない?」とアドバイスをもらいました。こうして、卵をからめたうどんに甘辛い鶏皮をのせた「すどりかま玉」が生まれ、好評に。今では当店の看板メニューです。
「すどりかま玉」とセットで提供している「揚げいなり」も人気です。いなりずしをもっとおいしく食べる方法はないか模索していた時に、揚げるという方法を知り、2000年くらいから提供を始めました。普通のいなりずしももちろんメニューにありますが、注文いただくのは揚げいなりばかりです(笑)

今は後継者のことは考えられないけれど、この味は残したい

子どもは3人いて、全員県外で働いています。子どもたちには、やりたいことをやってほしい。もしも3人のうち誰かが希望するならばもちろん継いでほしいですが、他人に店を譲ることは考えられませんね。長年苦労して作り上げてきたものですから。
ただ「すどりかま玉」「揚げいなり」の味は、何らかのかたちで残していきたいと思っているんです。例えば通販で全国に広められたらいいな、と。なので、後継者とまではいかなくても、店の運営をほぼ全て任せられるほどの右腕ができたら、自分は別の事業に専念できるので助かりますよね。もしくは、のれん分けをしてロイヤリティーを受け取るというようなビジネスのかたちなら、アリかもしれないです。
でも、本当に信頼できる人と出会うのはなかなか難しくて。もし本気でやりたいという人が来てくれたとしても、まだ受け入れきれない気がします。だから、どういう人に継いでほしいかと言われても、今はまだピンと来ないかな。自分が歳を重ねて動けなくなったら、考えられるかもしれないですけれどね。

住所:鳥栖市元町1256-4
電話:0942-82-0149
営業時間:11:00~15:00・17:00~20:00 「19:45 L.O」
※2021年4月から営業時間を変更。詳しくはホームページをご確認ください
http://katsumiyaudon.com/
休み:日曜日、月に1~2回 月曜日
駐車場:あり