この地に根を下ろし、うどんを打ち続けてきた

ここにはもともと、妻の兄が1981年に始めた「うどん香梅(こうばい)」という店がありました。私たち夫婦はそこで働いた後、1053年に店舗ごと譲り受け「中津隈うどん」の名で独立。私は佐賀出身ではなくて、以前も県外で店をしていたのですが、この地に根を下ろし、もうすっかり「みやき町の人」になりましたね。
当店のうどんは、粉から手作りです。最初から最後まで人の手で、しかも分業せず一人が一貫して作るからこそ、どんな作り方をすればどんな出来栄えになるのかがちゃんとわかります。早い時は朝6時半から、その日のぶんを仕込んでいます。けっこう体力がいるので、年を重ねると大変ですけどね。
小麦粉は、先代からの流れで創業当時は外国産を使っていました。でも国産の方がおいしいとずっと思っていて、2008年頃、世間の国産小麦ブームに先駆けるかたちで九州産「チクゴイズミ」100%に切り替えました。その扱いは難しく、ブツブツと切れてしまい、なかなか長い麺になりませんでしたが、試行錯誤を重ねて、今ではかなりうどんらしくなっています。当時は苦労しましたが、チクゴイズミにはそこまでする価値がありました。香りとコシが、やっぱり他の小麦とは違うんですよ。

店主自身が「これほどうまいものはない」というおすすめメニュー

現在の看板メニュー「肉山かけうどん」は、創業時からあったものの、以前はそれほど人気があったわけではありませんでした。でも私はこれが大好きで、「こんなにおいしいものは他にない」とひそかに思っていたんです。きっかけは、あるお客さんが「おいしい」と言ってくれたからだったかな。おすすめメニューとして店頭に貼り出してみたら、注文が増えました。いつもは別のメニューを頼んでいた常連さんも、食べてくれるようになったりね。
「えび天うどん」は、肉うどんと比べたら数は出ませんが(笑)、当店に来たら必ず注文するというお客さんがいるほど、根強い人気です。また、当店の自慢であるチクゴイズミを使った麺を存分に味わうなら、ざるうどんや釜揚げうどんがおすすめ。シンプルで他の味が混じらず、純粋に小麦の風味を楽しめますから。

興味を持ってくれる人がいるなら、話してみたい

昔は「うどん作りを教えてほしい」と来る人もいましたが、最近はまったくありませんね。県外で働いている子どもが3人いますが、継がせようとは思いませんし、後継者と言われても、やりたい人はいないんじゃないかな。この建物も古くて、継続するのであれば改修費もかかりますし。
もしも今、後を継ぎたいという人が来たとしたら……うれしいですけど、本気かな?と疑ってしまうかもしれません。国産小麦を使って手打ちするスタイルは今の時代に合っているとは言えませんし、利益も出づらい。生き残っていくだけでも大変ですから、今までやってきたようには続けられないでしょう。
だからといって、このやり方を変えるのであれば「継ぐ」ということにはなりませんしね。うどん屋を志すなら、別のところで今の時代に合ったお店を出したほうがいいんじゃないですか。でも、可能性は少ないと思うけれど、もし興味を持ってくれる人がいるならば、まずはお話してみたいです。やる気があって、本当においしいうどんの作り方を真面目に覚えたいという人なら。

住所:三養基郡みやき町中津隈3062-2
電話:0942-89-3566
営業時間:水曜~日曜11:00~19:00 月曜11:00~14:00
休み:火曜
駐車場:あり