「あんた、会社に勤めたらまた辞めるかもしれん。自分の好きな仕事をした方がよか。」２９歳で衣料品関係の仕事を退職し、次の仕事に進む事を躊躇っていた私の背中を押してくれた知り合いの言葉でした。基山町のうどん店での修業を経て、昭和５４年に創業し、４３年が経ちました。元々飲食店をされていた現在の場所にご縁があり、お店を始めました。母を説得し、母と２人でのスタートでした。それから３年後、大家さんが建て替えを行われ、現在のお店の姿になりました。そして結婚後は妻もお店に入ってくれました。多くの常連さんに支えられながら、口コミやインターネットを見て来て下さる方も多く嬉しく思います。
今のようなコロナ禍でのお客様が少ない時にも常連さんは来てくださり、本当に有難いです。仕入れはずっと変わらず地元のお店からです。皆さんに助けて貰ってここまでやってこられたので「初心を忘れない」という想いを大事にしています。酒屋さんとも長い仲で、お客様にお酒を楽しんで頂ければと思い、夜にはおつまみになるメニューをホワイトボードに書き込んでいます。

人気のメニューはトッピングのもやしが決め手の田舎うどんです。もやしが入っているうどんは珍しいとよく言われますが、修行したお店のうどんに入れてあり、「これは合うな。」と思い、当店でももやしを入れています。苦手な方もおられますので、初めてご来店された方にはもやしを入れるかどうか確認をしておりますので、ご安心ください。また、ざるそば、天ざるは一年を通して多くのご注文を頂きます。夏場には、自家製の麺と地元伊万里産のキュウリやトマト、卵黄などの８種類の具材を使った冷やし田舎や、冷やし山かけが限定メニューとして並び、ご好評いただいております。
うどんもそばも手打ちの自家製麵を使用しており、スープの御出汁は企業秘密です。ご家庭とは違い、お店ではたくさんの御出汁を一度に取るのでたくさんの旨味が出ているのかもしれません。他にも、丼物もご用意しており、カツ丼が一番人気です。他にも玉子丼、親子丼、天丼等もあります。

４３年間お店をやってこられたのは、長く支えて下さる皆さんのおかげです。今回、後世に残したい店に選ばれたことを常連さん方が自分のことのように喜んでくださいました。学生の頃から通って頂いて、今では親子３代で来てくださるお客さんもおられ、「こんなに大きくなりました。」と顔を見せに来てくださいます。皆さんに懐かしいと思っていただける場所になっていければと、これから５０周年を目標にお店を続けていきたいと思っています。私たちには娘が２人おりますが、お店を継ぐというのはなかなか簡単なものではありません。
仕入れ先の跡継ぎがおらず廃業されたりと、他人事ではなく私もいずれそうなるのだなと感じることもあります。ともあれ自分たちでやれる所まではやってみようと、夜遅くまでの営業を控え、健康には特に気を付けて、無理はし過ぎない様にするなど工夫しながら夫婦２人でやっています。元気にお店を続けて、これからも見栄は張らないで「よう来たねぇ。」と笑顔でお客さんを迎えたいと思っています。