最盛期には500人以上の職人が活躍した一大産地西川登で3代続く竹細工店。
武雄市の北東部には現在は工場が多く見られますが、明治初期頃は炭鉱があり、ざるを納めていました。当時は農業をしながら副業で竹細工を行い、春や秋には市やお祭りで販売していました。「西川登竹細工」と呼ばれ、最盛期には500人以上の職人が働く竹細工の産地となっていました。祖父が笊笥(そうけ=ざる)作りを始めて私で3代目です。竹材から細い竹ひごを作り、しなりを使って編み込む竹細工は、昔はざるやカゴ等の日用品として身近にあったものですが、現在では質感や風合いを楽しんで頂けているようです。
私の父は15歳の時に両親を亡くした後、竹細工を授産場で修業し、現在の場所で独立しました。私は高校卒業後に就職しましたが、ある時、父が入院し「帰って来て手伝ってくれ。」と言われ、22歳で栗山時雄竹細工店の仕事を始めました。当初、私は主に販売をしており、その頃は職人さんが多かったのですが、段々と職人さんも少なくなりました。平成20年頃に現在の栗山商店となりました。今は妻と二人で分業で製作しており、私が材料を取り、妻が編む、それをまた私が仕上げるといった流れです。
ひとつひとつ手仕事で作る伝統的な竹細工。現在では新しい使い方も。
西川登竹細工は、現在では佐賀県指定伝統的地場産品に指定されています。昔は、そうけ市や買物市、農業市などでお客さんに直接販売することが多かったです。そのため農業用の大物のざるや、米の研ぎざるや味噌こしなどの家庭用品など伝統的な商品が多いですが、最近は青竹を加工した白竹を使った商品も多くなりました。白竹は加工に何か月も掛かりますが、青竹と違って色が変わらないので家の中に置く飾り物にと選ばれる方も多いようです。ふるさと納税の返礼品としても出品しており、その中で特に高い人気を得ているのが綱代編みのサンドイッチかごです。
そして果物入れや小物入れとして六ツ目編みをした鉄鉢花六ツ目のかご。どちらも伝統的な編み方をしております。インターネットを見て気になった、と店に足を運んで商品を手に取られる方。親が使っていた物が壊れてしまい、どこで買っていいのか分からずご連絡を頂いたりする事もあります。新しい物も伝統的な物も、大切に思って頂けるのは有難いです。
私が作り続けることで・・。
1950年代に入り、家具や農具などには合成樹脂が使用されるようになり、徐々に需要は減少していきました。現在では、西川登竹細工を作っているのは私たちを含み残すところ2軒のみです。竹細工を製作するには、材料となる竹の確保や、竹を保管する場所、そして工房が必要です。職人でありながらも、一人の経営者として製作から販路の確保、生活をしていけるほど稼ぐとなると大変で、よっぽど好きじゃなければ続けていける仕事ではありません。
実は何年か前までは私の代で終わるんじゃないかと思っていましたが、佐賀県の支援で、西川登竹細工仕事体験インターンシップを募集し、実際に西川登に来ていただき、竹細工の仕事体験から武雄市での暮らしを感じられるスポットのご紹介や地域の方との交流等をしていただきました。その時に参加してくださった大学3年生の方が卒業後に西川登に来てくださることになっており、その後もこちらに来て、荒れ果てていた竹林を一緒に整備してくれたり、大変助かりました。今後も、私が作り続けることによって、若い方が興味を持ってくれたらいいなと思っています。
住所:佐賀県武雄市西川登町神六28436-3
電話:0954-28-2178
営業時間:9:00~17:00
休み:不定休
駐車場:普通車3台