無我夢中でラーメン作りに挑んだ母の姿。学業と併行して修行を重ねた日々
野田 光基さん(50)
ビッグワンという店名は、王貞治さんの大ファンだった父の「一番になって欲しい」という想いが込められています。そんな父は、駅前のビルでゲームセンターを営んでいました。そんな折、今の店の場所にビルが建つと知り、「商売敵になってはいけない!」と慌てて物件を抑えたそうです。後にどんな店をやろうか考えた父。当時、駅周辺にラーメン屋がなかったことから、1983年(昭和58年)にオープンしたのがビッグワンの始まりです。
そこから2店舗の経営が始まったわけですが、父はゲームセンターの仕事があったので、ビッグワンは母が任されることに。久保泉でラーメン屋を営んでいた料理人を呼び寄せて、スープ作りから麺上げ、チャーシューの仕込みまで無我夢中で習ったと聞いています。店をオープンしてから程なくして、父は病気で他界し、ゲームセンターは閉店。その後、高校に進学した私は、休日に母からラーメン作りを習い、卒業と同時に料理人として店に立つようになりました。
ラーメンで最も難しいのが麺上げ。数人分の麺が入った大鍋からきっちり一人前ずつ上げられるようになるには、かなりの鍛錬が必要でした。素早く上げないと麺が伸びてしまうし、とにかくタイミングが命。どのくらいで一人前になれたかですか? それはお客さんが決めることであって、自分の口からは言えません。
良質な豚骨が作り出す、トラディショナルな佐賀ラーメン
野田 光基さん(50)
母曰く、久留米や博多のラーメンとは違う味にしたかったそうです。駅前でサラリーマンのお客さんが多いので、胃にもたれないあっさりとした味がこだわり。そのため、豚骨をじっくりと煮込んだスープは、しっかりとうま味を感じられるものの、にんにくは使用していません。チャーシューはあっさりとしたスープに合うように塩と醤油だけで炊いています。
サラリーマンはもちろん、女性のお客さんからも人気なのが「野菜ラーメン」。創業時からのメニューですが、佐賀ラーメンの野菜入りは恐らくうちが発祥だと思います。強火でサッと炒めた、キャベツやモヤシ、ちくわ、かまぼこを一度スープに馴染ませることで、具材にもうま味が行き渡り、野菜とラーメンを一体化させていることが特徴。最後の一滴まで飲み干せるスープ作りを目指しています。
多くの人の想い出に残る一杯。昔ながらの味を守り続けたい。
野田 光基さん(50)
今年で創業38年。2代目として18歳から店に立つ私も50歳になりました。創業時からの常連さんは、お子さんやお孫さんと3世代に渡って食べに来てくれている方もいらっしゃいます。中には、佐賀に帰省するときは、まず一番にうちのラーメンを食べて「あぁ、佐賀に帰ってきたんだなぁ」と実感して、それから実家に帰るという人も。そんな声を聞くと、この味を守っていかなければいけないという気持ちが強くなります。
まだ50代なので、体が元気なうちは店を続けたいと思っています。後継者についてですが、今のところ、3代目は決まっていません。年々、昔ながらの佐賀ラーメンを提供する店が減ってきているので、もし継承したいという人がいるとするならば、この味を守ってくれることが前提。先のことはわかりませんが、これからも「今日もおいしかった!」「これぞ佐賀ラーメン!」と言われる一杯を作り続けていきたいです。
住所:佐賀市駅前中央1-13-16
電話:0952-30-8212
営業時間:11:00~23:00
休み:日曜 ※翌日が祝日の場合は日曜営業し、月曜代休
駐車場:なし