店主の目利きで仕入れるこだわりの味を求めて、人が集まる

新福 信夫さん(70)

鹿児島で生まれ育ち、18歳で名古屋の都ホテル「近鉄四川飯店」に就職。6年ほど勤めた後、西日本各地の四川系レストランで経験を積みました。そんな折、佐賀市呉服町にあった本格中華料理店「開花園」に料理人が足りないから手伝って欲しいと知人から頼まれまして。それから佐賀で暮らし始めることになったわけです。
「開花園」には、社長に気に入られたこともあって、10年ほど勤めました。その間もさまざまな店からオファーをいただきましたが、料理人として20年経ち、そろそろ独立を考えていた頃で。地元の鹿児島に戻りたい気持ちがあったものの、既に結婚し、子どもたちは学校に通っていたため、佐賀で店を出そうと決意しました。
オープン当初は、とにかく料理の腕をふるいたくて。今より景気も良かったので、高級食材を仕入れて、コース料理を提供することも多かったです。しかしながら、接待などを除いて、やっぱり喜ばれるのは、麺やご飯もの、定食で。お客さんの要望に応えていくうちに、大衆的な中華料理が主体になっていきました。

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新福 信夫さん(70)

本来の中華料理に皿うどんやちゃんぽんはありませんが、佐賀の人にとってはテッパンですよね。私自身、九州に帰ってきて、初めて学んだメニューでもあります。うちの皿うどんは、毎朝仕込んでいる鶏の中骨から引いた一番ダシをベースに、味付けは醤油だけ。あっさりとしているものの、しっかりとうま味を出すには、中華ならではの細かい技術が必要です。一見、シンプルな料理に見えますが、麺は油に通す、両面を焼き付けるなど、コクや食感が増すような工夫を凝らしています。好みによって、ソースをかけたり、酢醤油をかけたり、そのまま食べたり。お客さんは、それぞれの楽しみ方があるようです。
佐賀にもいろいろな皿うどんがありますし、皆さんそれぞれに工夫されていると思いますが、私は私で「うちの皿うどんが一番!」と思って作っています。 昨今は、目新しいもの、変わったものが好まれる風潮があるけれど、同じ味を守り続けていくことも大切ではないでしょうか。そこには、懐かしさや想い出があって。帰省するたびに「やっとこの皿うどんが食べられた!」と、喜んでいるお客さんを見ていると、この味を変えちゃいけないなという思いが強くなります。

一本一本真心込めて作ることの大切さを理解してくれる人に

新福 信夫さん(70)

息子が2人いますが、会社勤めをしているので、一代で終わりになるかもしれません。これまでの30年間、「修業させて欲しい」という申し出をお断りしたこともありました。今になって、弟子や後継者をつくっておけばよかったと思っています。
もし、後継者になりたいという人が現れたらですか? そんな人がいらっしゃれば、ぜひ引き継いで欲しい気持ちはあります。調理の経験があれば、中華のやり方は教えられますから、料理のジャンルや年数は問いません。
今年で70歳になりますが、これまで店を続けてこられたのはやっぱりお客さんのおかげ。創業時から通ってくれている常連さんも多く、いつも「まだまだ店を続けてね」「食べにいくところがなくなって困るよ」と励ましてくれて。足腰にガタはきていますが、体が元気なうちは料理を作り続けたいです。

住所:佐賀市八戸溝1-10-25
電話:0952-30-5618
営業時間:11:30~14:00(テイクアウトのみ~17:00)
休み:月曜
駐車場:あり