東京オリンピックの年に『宝来軒』がオープン。長年通う常連客も多い

原田 康子(83)

うちで宝来軒を始めたのが昭和39年。東京オリンピックの年ですね。うちは元々アイスキャンデーの製造をやってたけど、他にも折箱の製造や回転焼き、アイスクリームの卸など色んなきっかけや縁があってさまざまな仕事をやってきました。
実はこのお店もご縁で始めたものなんです。元々この通りに『宝来軒』というラーメン屋がありまして、その店がここを離れることになった時に店の主人が地元の人で継いでくれる方を探しており、それで手を上げたのがきっかけでした。
なので、元々あった『宝来軒』の味とのれんを継ぐ形で今の『宝来軒』ができました。当時は他の仕事にお店に出前と忙しく働いていましたね。
お客さんはやっぱり地元のお客さんが多いですね。常連さんが連れてきた子どもが今度は成長して子どもを連れてきてくれたり、2世代3世代に渡って通ってくれています。
この辺の学生や若い方もよく来てくださりますし、面白いのが新成人の方が成人式の後に食べに来てくれたりします。いつの間にか「成人式の帰りに宝来軒に寄ってラーメンを食べると人生がうまくいく」っていう言い伝えが出来ているらしいんです。縁起良さそうな名前だからでしょうかね。
数年前までは主人と2人でやっていましたが、亡くなってからは基本は1人でやってます。家族も手伝ってくれているし、常連さんも主人が亡くなってからもひっきりなしにお店に顔を出してくれます。そのおかげで今も頑張れていますね。

スープは店の魂。継ぎ足しで作られる豚骨の味は何度も足を運びたくなる美味しさ

原田 康子(83)

ラーメンの味は昔から変わりません。スープも昔からの作り方でずっと継ぎ足し継ぎ足しでやっています。
朝から豚骨を10キロくらい鍋に入れて朝から7時間くらいかけてスープを炊いてます。ガス代も馬鹿にならないし鍋を混ぜるのも重くて大変だけど、やっぱりスープが美味しくないとラーメンは食べられない。やっぱりスープはラーメンの魂だから。
最近は若い人でも昔ながらのこの味が美味しいと言ってくれる人も増えてきた。1回来たらまた来たくなるんだそうです。もう1杯でも食べたくなるのがこのラーメンだと思います。

「この味を絶対に残したい」店と常連さん共通の想いを後世に

原田 康子(83)

本当は、主人にお店を辞めたいということを話してたんです。主人は続けたいという想いがあっていい返事は聞けませんでした。でも主人が亡くなってからは主人の遺志もあって今は続けられるだけは続けたいと思っています。お客さんもそれが何よりの供養になると言ってくれていますしね。
後継者については正式に決まっているわけではないです。娘夫婦もよく手伝ってくれてて、ぜひ継いでほしいとは思っているけど今は外で働いているし、今は私が元気でやっているのでしっかり話をしているわけではありません。
家族も「この味を残したい」とは考えてくれているし、常連さんも「この味は絶対に残さないと!」と言ってくれている。中には「やめる時は俺に絶対この味を継がせてくれ」って言ってくれた若い方もいました。
長い間通って応援してくれている常連さんや地元の方のためにも、私もこの伝統と味は残したいと思っています。そのおかげで今も続けられる。出来る限りは頑張って、後はこの想いと味を受け継いでくれる真面目な人に任せられると嬉しいですね。

住所:神埼市神埼町神埼75
電話:0952-52-2460
営業時間:11:00~24:00
休み:不定休
駐車場:店裏に駐車場あり